2020年は日本でもCBDC(中央銀行デジタル通貨)が大きく話題となり、官民で議論が進んだ1年となりました。内閣官房の方と話していると、CBDCは当然ながら日銀マターであり、行政機関としては金融庁が担当になっているみたいです。
CBDCは、必ずしもブロックチェーンを使うものではなく、どちらかというとFinTech領域の方々の方が盛り上がっているのではないかという印象を持っています。
なぜ民間でもここまで注目されているかというと、CBDCが発行された場合にそこに巨大な市場が一つ出来上がるからです。
わかりやすいのが開発リソースでしょう。CBDCを軸にした決済システムがローンチされる場合、民間もそれに対応する必要性がでてきます。自社に人材がいない場合は外注しなければならないため、エンタープライズブロックチェーン領域に張っている企業は皆、これを見据えて今の段階から準備しているわけです。
さて、日本の中央銀行はCBDCを発行するのでしょうか。
べき論でいうならば、私は発行すべきだと考えています。むしろ、10年以内に発行されていない未来は想像できません。タイミングは米国に合わせることになるでしょう。
少し昨今の状況を踏まえてCBDCの是非について考察していこうと思います。途中で力尽きて短めになってしまいましたが、年末年始にでもご笑覧ください。
CBDC発行の懸念は民間市場の圧迫
FacebookのLibraをきっかけとして、中国の国家プロジェクトであるデジタル人民元によって議論が加速したCBDCですが、今や世界の約8割の国々が発行を検討しているといわれています。
このCBDCは、米国や日本などの多くの先進国では発行が見送られている状況が続いています。理由は多岐にわたりますが、その1つが民間の決済システム市場を圧迫しないかという点です。
これに関しては日銀副総裁の雨宮氏も、仮にCBDCの決済コストが民間のそれを下回る場合、多くの小売店は民間マネーではなくCBDCを選択することになるだろうと言及されています。
他国の状況を踏まえ、冷静に是非について言及されているので、これはぜひ読んでおくことを推奨します。
〇〇ペイとCBDC
CBDCを発行すべきとする民間側の意見としては、異なる決済サービスの橋渡しとなる可能性に言及するものが多いです。〇〇ペイが乱立している現状において、CBDCがそのブリッジ通貨としての機能を果たすのではないかという意見でしょう。
これに関しては、私も確かにCBDCがブリッジ通貨としての役割を果たせると考えているものの、それだけのためにCBDCは発行されないと言い切れます。
〇〇ペイによって確実にキャッシュレス化の波は到来しましたが、現状その市場規模は数兆円にとどまっているからです。
一般的なビジネスの市場規模としては確かに大きいのですが、クレジットカードの市場規模が約70兆円であるのと比べると、取るに足らないものになってしまいます。この小さい市場のためだけに、国家規模の共通通貨を発行するとはとても考えられません。
香港国家安全維持法と日本のCBDC
それでもやはり、CBDCを含むデジタル通貨は必要だと考えます。私個人の考える理由としては一つ、世界がそうするからです。
背景には、香港で制定されてしまった国家安全維持法の存在があります。
米中冷戦の最中、国際金融センターであった香港が実質的に中国となったことにより、その機能を失ってしまいました。世界はもはやグローバル化ではなく米中のブロック化へと進んでいますが、私もこれに賛成です。そして、そんなブロック化の時代に重要になるのが日本だと考えています。
理由としては、日本は米中に次いでGDP第三位であり第四位以下の多くがEUであること、立地的にも米中の間に位置していることなどがあげられます。そのため、これまで香港ドルが担ってきた米中貿易の仲介点が日本になると考えています。
昨今の、日経225の上昇にこの期待が表れているのではないでしょうか。投資の神様バフェットが日本の商社株を購入したのも頷けます。
ご存知の通り、中国では既にCBDCが実用化フェーズに入っています。中国ブロック圏で中国発のCBDCが基軸通貨として使われ、米国ブロック圏でも同じことが起こる場合、それらを繋ぐ日本でもCBDCが必要になるのではないでしょうか。これが日本でCBDCないしデジタル通貨が必要になる理由です。
CBDCの強みは、デジタル化による流動性とインターオペラビリティ(相互互換性)だと考えています。この二つが必要になる時代において、現金ではとても対応しきれないのです。
グローバリゼーションを持たせるか
日銀のどなたかが、CBDCを発行するにしても他国のCBDCとのインターオペラビリティは必要としないと言及されていました。
私はCBDCに他国とのインターオペラビリティは不可欠と考えます(後述しますが、厳密にはこの議論が意味を持ちません)。理由は先述の通りで、国際金融センターとして香港の後を継ぐのであれば、米中のブリッジ通貨としてのインターオペラビリティが必要になるからです。
そして、そのためにブロックチェーンが必要になります。テックサイドの人間からすると、ブロックチェーンの強みの一つにプロトコル同士のインターオペラビリティがあげられます。
例えばRDBを使う場合、RDBは他のRDBを直接コールしたりせず、必ず何かしらのインターフェースを介す必要があります。ブロックチェーンの場合、プロトコル同士が直接リンクするので、ゲートウェイ的なものが必要ありません。
前職で緑色の某不動産ポータルのインフラチームに在籍していたのですが、あれぐらい巨大なサービスになると密結合もいいところで、どうにもこうにも改修ができない場合があります。
CBDCのインフラとなるともはや想像できませんが、間違いなく日本最大のシステムになるでしょう。そんなシステムの長期的なユースケースを考えると、ブロックチェーン以外ありえません。疎結合に組みやすいからです。
何が言いたいかというと、グローバリゼーションは必要か否かではなく、ブロックチェーンを使えばグローバリゼーション(他国とのインターオペラビリティ)はデフォルトで備わっているということです。
勢いで書き始めましたが、息切れしてきたので中途半端にここで終わろうと思います。機会があれば、どなたかCBDCについて議論しましょう。